続・晴耕雨読

東北在住のへっぽこ医師ばんじょーの日々思っていることをつづったブログです。週2回くらいの更新を目指しています。スパムコメント対策のため、 コメント時に画像認証をお願いしております。お手数ですがご了承ください。

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バリデーション!~病棟実習精神科編~

今日は臨床心理研究会の忘年会で、恒例の焼肉食べ放題に行ってきた。後輩相手に取りとめのない話を撒き散らしてくる。これをまさに管を巻くと言うのであろうか。何はともあれ、幹事をしてくれた部長さん、お疲れ様でした、ありがとう。

さて、精神科の実習の話。僕の担当の患者さんは、Lewy小体型痴呆の疑いのある患者さんであった。場所を聞いても、「今は家にいます」と答え、日時を聞いても、毎日「今は2月某日です」と答える。見当識障害(場所と現在時間を認知する機能に障害があること)を呈していた。精神病症状(統合失調症的な症状)も見られ、日時や場所以外のことについても、会話がまともにかみ合わない状態であった。

これでは会話が進まない。ということで、僕は心理学の技法を使ってみることにした。現在の日時に関する認知力が低下しているのなら、患者さんの思い出に残る日時を基点にして、現在(もしくはそれに近い時点)まで、患者さんの中の時間を進めてあげればいい。ってことで、患者さんに、すごく嬉しかったことや悲しかったことは何かを聞き、それはいつの出来事か(例えば、子供が何歳のときか、結婚してから何年目か、とか)を聞いてみた。そういう聞き方をすると、結構昔の記憶を思い出せるようで、さらに、そういった昔話をするときは、全然痴呆とか精神疾患を感じさせない話し方であるように感じたのであった。

そうして実習期間が過ぎてしばらくした後、ふと図書館で『バリデーション』(Naomi Feil著、筒井書房)という本を見つけて、何気なしに借りて読んでみた。その本は認知症の患者さんといかに接するかについて書いていて、認知症の患者さんの感情に寄り添うことで、認知症の患者さんの気持ちを理解し、円滑なコミュニケーションを図ることの大切さを説いている本である。

1/3くらい読んで、おお、そうだそうだ、そうなんだよ、と膝を打つ。認知症の患者さんに共感するっていうのは、患者さんの感情を汲み取ることから始まるんだよね。

感情が大事であることについては、アントニオ・ダマシオが『生存する脳』で論じている。感情っていうのは人間が社会生活を営む上で重要な機能で、たとえば、人間のとる行動には無数の選択肢があるけど、その中から1つの選択肢を選ぶ過程において、人間がまず用いているのは論理的思考力ではなくて、実は、好き嫌いとか感情的な嗜好なんですね。こういう行動をとるのが好きだから、それを行うと適切であるという理由を後付でくっつけよう、っていうのが人間の心の動きなんじゃないか、というのがダマシオの主張である(と思う)。ゆえに、感情をつかさどる脳の部分(前頭前野)に障害が生じると、その場その場ではある程度適切な行動が取れるのだが、長期的に自分に利益をもたらすような行動(例えば、どんなにつらくても安易に転職しない、キャッチセールスにだまされない、など)をとれなくなってしまうのだという。

でも、前頭前野が正常でも、感情的に「これが正しい」と思っていることを、世間の事情から、実際の行動に移せないことはよくある。浮気性の夫に対する嫉妬心から夫を撲殺するのは世間では容認されないことである。そういうときに生じた負の感情を押し殺して老年期を迎え、認知症になると、抑えられなくなった感情が爆発するんだという。そういうときに、怒り狂って何にでも当り散らしているお年寄りに対して、「こんな老人の面倒を見れるか」と突き放すこともできるけど、「本当は解決したい心の葛藤があるけれども、それに面と向かい合うことが出来ないから別のことに当り散らしているんだ、その心の葛藤に焦点を当てて、話を聞いてみよう」とコミュニケーションを試みることで、そのお年寄りの怒りが静まり、お互い心安らかにその後の時間をすごせるようになるかもしれない、というのが『バリデーション』に書かれていることである。

感情が強く結びついた経験が強い記憶として残るっていうのは、経験的に感じることである。かつて予備校で勉強していたときの、恩師コウイチさんの教えである「物事を記憶するためのいい方法は、感動することだ」ということは、まことに含蓄の深い言葉だと思う。僕は患者さんとのコミュニケーションに、感情と結びついた記憶を探る技法を使ったんだけど、彼我の感情に焦点を合わせるというのは、非常に有用な技法だと思うのである。にもかかわらず、感情っていうのは世間的にはあまり重要視されていないし、世間は感情というものに対してむしろマイナスのイメージを持っているように思う。確かに、感情的になるということに関して、世間ではいい評価を受けないようだ。でも、自分の感情に相対して感情を把握することと、感情を表に表出させることを分離させることが出来れば、感情的にならずにすむんじゃないかと思うし、負の感情を心に溜め込まずにすむんじゃないかと思うんだけど、そういうことを勧める人は、あまり世間にはいないような気がする。

帰りにコンビニに寄って靴下を4足買って帰る。最近、立て続けに靴下5足に穴があいてしまったので、急遽買い揃える必要が生じたのである。1足づつ順番に穴があいてくれればいいのに、と思うんだけど、僕の場合、なんでか物事はいっぺんにやってくるようである。

ついでに週刊少年サンデーを買う。普段は買わないんだけど、今週から医療マンガが始まるというので、つい気になって。読んでみて、あまりのひどい展開に思わずうなってしまう。あの内容がスタンダードな医療だと思われたくないなぁ…。気になった方は、読んで感想を聞かせてくれると嬉しいです。ということで、夜もふけた(っていうかもう朝)なので今日はこれでおしまい。


PS 先日センツァさんから、ダマシオは現在スピノザ学会のお偉いさんになっているという話を聞いたので、センツァさんに勧められて『エチカ』を買ってみたものの、未だ積読。そろそろ手をつけようかな~。
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  1. 2007/12/09(日) 05:14:40|
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