続・晴耕雨読

東北在住のへっぽこ医師ばんじょーの日々思っていることをつづったブログです。週2回くらいの更新を目指しています。スパムコメント対策のため、 コメント時に画像認証をお願いしております。お手数ですがご了承ください。

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硝子体という名の深海へ~眼科実習編~

眼科の実習に行ったら、先生の9割5分はメガネであったことに驚いているばんじょーです、こんばんは。あとの5分も、もしかしたらコンタクトかも知れない…。眼が悪かったことから眼科に興味をもってこの道に進んだのか、眼科に入って暗い部屋で眼底を覗いていたら眼が悪くなったのか、聞こうと思いつつ結局眼科実習が終わってしまいました。誰か真相を知っている人がいたら教えてください。

さて、眼科では、豚の眼を使っての白内障の模擬手術をさせてもらった。
白内障っていうのは、眼の水晶体という部分が濁ってきて視力が低下する病気である。治療は、顕微鏡で患者さんの眼を見ながら、手術(超音波乳化吸引術)で水晶体の内容物を削り取ってそこに眼内レンズを埋め込むのが基本である。

で、豚の眼を人間の顔をかたどった模型に埋め込んで、それを顕微鏡で覗き込みながら模擬手術を行ったんだけど。

黒目から5mmほど耳側に離れた白目部分に、5mmほどの切り目を入れて、そこから前眼房に注射針を差し込んで膨張液を入れる手はずになっていた。…だけど、注射針は前眼房にとどまらず、角膜に刺さり、膨張液はなんと5mmほどの薄さの角膜内に注入されてしまって。おかげでその部分は白く濁ってしまい、白内障を治療するどころか余計に視力を低下させる要因を作ってしまうという失態を。でも、薄い角膜内に膨張液を注入するなんて、相当レアなケースのようである。なんでこんなことが起こるんだ?

班員の一人が「あ~あ、こりゃ医療ミスで訴えられるな」
ばんじょー「ぐっ」

確かにこれは言い訳できない。でも、練習だから仕方ないと気を取り直し、手術の続きへ。
結膜からメスを入れ、細かい隙間から水晶体に切り込みを入れ、水晶体内に水を注入して水晶体嚢と水晶体核を分離し(ハイドロロダイセクション:これを上手くやらないと、あとで超音波で水晶体核を破砕するときに、水晶体嚢も一緒に巻き込まれて破れてしまう)、そこから超音波メスを挿入して水晶体核を破砕して削りとっていく。

ここまでは順調に終わり、最後に水晶体内にレンズを入れる段階になった。最初のミスを除けば、初心者にしては上出来なんじゃないだろうか、と少し自信が出てきちゃったりして。

その時、手術を手伝ってくださっていた、医療機器メーカーの社員さんが(病棟実習で驚いたことの一つが、医療機器メーカーの社員の方が、学生の実習の手助けをしてくださるということである。こんな生意気な学生のサポートをしてくださるなんて、頭が下がる思いです)、ありがたい提案をしてくださった。

「普段は固いレンズをお渡しするんですが、今回の学生さんは熱心に実習されているので、特別に折りたたみ可能なレンズをお渡ししますので、これを使ってください」
なんでも、折りたたみ式は高価だから普段の実習では使わせてもらえないんだとか。おおっ、なんてラッキーなんだ。

折りたたみレンズは、水晶体嚢に入れてから広げる式のレンズで、切開部位が小さくて済むという特徴がある。挿入してみると、確かに入り口に引っかからずにスムーズに入る!!
じゃあ、水晶体嚢内で広げてみるか…あれ、なんかピンセットを開いてもレンズが広がらないよ?

不安になって社員さんの方を向くと、困ったように「どうやら強くピンセットで挟みすぎて、レンズ同士がくっついちゃったみたいですね…」

ぶっ、そんなことってあるの?まずいと思い、水晶体嚢内で広げようとピンセットを使って悪戦苦闘していたら、なんと折り目からレンズが真っ二つに割れてしまうという悲劇が。そして、割れた際に水晶体嚢を破いてしまったらしく、割れたレンズは硝子体の底に沈んで行きました…(位置的には、視神経乳頭とか黄斑の付近に沈んだのではないかと思われる)。
映画『タイタニック』の最後のシーンで、極寒の海に沈んで行くレオ様を見届けるケイト・ウィンスレットの気持ちがちょっぴり分かったような気分でした。

ばんじょー「……」
社員さん「……すみません、私が余計なことを言ってしまったばかりに…」
ばんじょー「いえ、僕こそ、せっかくの好意に応えられず…」

折りたたんだレンズが割れるのは、社員さん曰く相当レアなケースらしいんだけど、いずれにせよ手術失敗には変わりなく。
親切にしてくれた社員さんに切ない思いをさせてしまったことにさらに切なさを感じつつ、白内障手術実習を終えたのであった。

後日先生に聞いたところ、眼の奥(硝子体底部)に沈んだ眼内レンズや異物を取り出すのは、かなり専門的な手術が必要らしく、それが出来るのは秋田でも指折り数えるくらいの眼科医しかいないそうで。
先生は「いや~、白内障手術に失敗すると異物が硝子体の奥に沈むんだけど、年に何回かはそういうケースが大学病院に回ってくるよね~」

すみません、そういうケースを作ってしまいました…。
でも、2つのレアな体験をさせてもらったのは、すごい勉強になりました。眼科医は、狭い空間の中でものすごい高度な技術を使って手術をしていることが分かり、あらためて尊敬の念を抱いたのであった。
眼科医になるかどうかは分からないけど、なるとしたらもっと腕を磨かないとね~。

本当は図を載せたかったんですが、時間がなくて図を掲載できず。医療系でない方には訳の分からない話だったと思います。ごめんなさいね。

次は循環器・呼吸器内科へ。
To be continued…
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  1. 2007/05/27(日) 23:55:25|
  2. 医学
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