続・晴耕雨読

東北在住のへっぽこ医師ばんじょーの日々思っていることをつづったブログです。週2回くらいの更新を目指しています。スパムコメント対策のため、 コメント時に画像認証をお願いしております。お手数ですがご了承ください。

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男集団のエクリチュール

先日の夜8時の時点でのクラスメートの会話。発表用の資料が出来上がって、印刷した後で、こんなやり取りがあった。

「みんな、今作った資料、明日までに100回は目を通して来よう!」
「ひゃ、ひゃ、ひゃ、ひゃ、百回?」

いや~、ベタな会話だなぁ。横で聞いてて思わずニヤニヤしちゃったんだけど、このやりとりをした2人もそのベタっぷりに笑ってたのが面白かった。



さて、本題。

最近(という訳でもないけど)新しい教室で授業を受けるようになり、それに伴って座席の配置が以前とは違うものになった。以前の座席では周りのクラスメートは男女混じっていたので、女性とも時折話すことがあったが、教室が変わってからは、周囲は全て男になったので、休み時間などに女性と話す機会がめっきり少なくなってしまった。

別にそれはそれで気楽でいいのだけど、最近、たまに女性のクラスメートと話をする時にちょっとしたぎこちなさを感じるようになった。教室が変わってから1ヶ月も経たないのに、である。

そんな短期間で人間関係がぎこちなくなるものなの、って思うかもしれない。でも、人がある種の集団の中で人間関係を築くための適切な言葉遣いを学習した結果、他の集団に属する人間とのコミュニケーションがうまくいかなくなることってあると僕は思うのだ。

例えば、今まで真面目で「うん、お母さんをがっかりさせたくないから勉強頑張るよ」なんて母親の言うことを素直に聞いていた男の子が(そんな子が今どきいるのか分からないけど)、高校デビューしてちょいワルの友達と付き合うようになって「いちいち口出しすんなよ、ババァ」なんて言うようになったとする。母親はびっくりして、以降息子と話すときは、おそるおそる、距離を置いて話すようになるかもしれない。

このことは、彼は「ちょいワルの友達」という集団に馴染むための適切な言葉遣いを学んだ結果、優しい言葉遣いが望まれる集団である「家庭」と少し距離が離れてしまったと言えるんじゃないかと思う。

社会に存在する集団は、それぞれ「正しいことばの使い方」として集団的に承認した語法を持つという。そして、集団はそれらの語法を用いるよう集団の成員に陰に陽に要求する。そのようなことばの使い方を、思想家ロラン・バルトは「エクリチュール」と呼んだ(『現代思想のパフォーマンス』難波江和英・内田樹著より)。

ということで、男だけの集団には男集団のエクリチュールがある。どういうことかと言うと、男集団の中ではある種の乱暴なコミュニケーションが適切であり、女性が持つような相手を多く気遣うようなコミュニケーションを使う人間は“テンポが異なる”ものとして集団から敬遠されるのではないかと言うことである。例えば、「お前、頭悪すぎるよ、って今言ったけど冗談だからね、本気にしないでね」って言ったら、男同士だったら冗長すぎて鬱陶しいと思われるだろう。男同士だったら「お前、頭悪すぎるよ、ぎゃはは」だけで十分なのだ。

ちなみに、エクリチュールは、言葉だけでなく、身体運用や振舞いなどといった個人の行動全般についても、彼の所属する社会集団における規範的なふるまい方に従うことを要求するという。僕が女性と話すときにぎこちなさを感じるのも、男集団が求める「女性とは一定の距離を置いて話すべし」という規範(そういう規範が本当にあるのか分からないけど)に無意識に従うようになってきているのかも知れないな、と思う。男集団の中の1人が、好きな女性が出来たけど照れくさくて話しかけられない、って親しい男友達に相談して、周りの男友達が頑張ってその照れ屋の男をバックアップしていく、って話はよくありそうじゃないですか。彼がそういう振舞いをするのは、本人の性格もあるけど、その男集団が彼に照れ屋であることを求めてるっていう面があると言えるのではないだろうか。


で、なんでこんな話を書いたかというと、先日女友達から焼き芋のお菓子をもらったときに、こんな会話をしてしまったからである。

「これ、食べてみてよ」
「あっ、この芋菓子、本当に買ったんだ。ありがとう、どれどれ…(袋から1つ取り出してみる)。この色形、あれに似てるなぁ。う~ん、何に似てるか言ってもいい?」
「えっ?」
「(返答を待たずに)寄生虫のウェステルマン肺吸虫に似てるよ」
「…(無言)」

いや、芋菓子の購入を勧めた僕が言う言葉じゃないよね…。ほんとすみません。いやね、これは僕が悪いわけではなく、男集団のエクリチュールが僕にある種の振舞いを要求した結果なんですよ。そんな言い訳がましい上に人のせいにするという、男の風上にもおけない僕であった。

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  1. 2006/09/29(金) 02:20:26|
  2. 心理学・現代思想
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癌に効く薬

昨日、名古屋市立大の朝元助教授が、ざくろの成分が前立腺癌の治療効果を持つと発表したそうである。なんでも、人間の初期の前立腺癌細胞を培養して、濃度5%のざくろ果汁溶液を加えたところ、30分で細胞と溶液が反応を起こして、癌細胞が死滅したという。

また前立腺癌のラットに5%ざくろジュースを飲ませたところ、癌縮小効果が見られたそうである。

詳しくはこちらのヤフーニュースから。

前立腺癌の治療法としては、内分泌療法、放射線療法、手術療法、化学療法など種々の治療法があり、特に内分泌療法では治療する時期によっては5年生存率は70~80%と比較的好成績を保っている(標準泌尿器科学7版p309)。それでも、前立腺癌治療に関するざくろの成分の研究が進むことで、より効果的で患者さんに害の少ない前立腺癌の治療法が生まれればいいな、と思う。

話はそれるけど、米国のアンドリュー・ワイル医師は『癒す心、治る力』の中(p86)で、皮膚のあざを溶かす薬草について述べている。ブラッドルート(Sangurinaria canadensis)という、北米やカナダの高木林地に生える薬草を軟膏にしてアザに塗ると、正常組織を損傷することなく皮膚の異常成長物を溶かすんだそうである。ワイル氏は実際に知人の色素細胞母斑をブラッドルート軟膏で治癒したとのことであり、また氏によれば、浸食性の乳癌もブラッドルートで治したという報告も過去の文献に見つかっているとのことだ。ブラッドルートという薬草は、かつては薬品として使われていたが、その毒性ゆえに近年では危険な薬草に指定されているそうである。

ざくろとか、ブラッドルートとか、身近すぎて見落とされそうな食品や忘れ去られた薬品だと思うんだけど、そういうところに目をつけることが出来る視点を持っていることが、朝元氏やワイル医師のすごいところなんだろうなぁ。

自分もそういう視点が持てるといいなぁと思いつつ、それ以前の問題として進級試験を突破できなければ医師になれないという現実に気づいてちょっと切なくなりました。明日から勉強がんばろっと。
  1. 2006/09/29(金) 00:59:49|
  2. 医学
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そろそろテストが近くなってきたので甲状腺機能低下症について書いてみる

久方ぶりの更新です。見に来てくださった方、間があいてしまってすみません。

期末試験が近づいていることもあり、復習も兼ねてブログに医学関連のネタも書いていこうと思います。医学関連のブログを書くときは「医学」というカテゴリで書く予定なので、医学に興味のない方は読み飛ばしていただければ、と思います。

表題と全然関係ないけど、紀子様が男児を出産したというニュースについて、僕の前の席に座っているクラスメートが「オレにインタビューしてくれればいいのに。そしたら『そんなこと、どうでもいいです』って答えるのにさ」と言っていた。インタビューされたいのかされたくないのか、どっちなんだろう?思わず吹き出してしまったけど、センスのあるユーモアだと思いました。

さて、医学の話。先日友人と「甲状腺機能低下症で血清CPK値とLDH値が上昇するのは何故だろう?」という話をしていたのだが、その時は理由が分からず、気になったまま時間が過ぎてしまっていた。最近になって理由が分かったので、ここにその理由を書こうと思う。

甲状腺について詳しくない方に簡単に説明すると、甲状腺とは喉仏の近くにある臓器で、甲状腺ホルモンというものを産生している。甲状腺ホルモンはヨウ素から作られている蛋白で、血流に乗って全身各所の細胞に行き渡り、細胞に働きかけて酸素消費量、熱産生量、基礎代謝を上昇させる。簡単に言うと「全身の細胞にアクセルをかける」働きを持つ。

だから、甲状腺ホルモンが過剰になると、頭の回転が速くなるけど落ち着きがなくなるし、頻脈になり、体温が上がり、エネルギー消費が増えるから体重は減少する。でも食欲は亢進する。甲状腺ホルモンが過剰になる病気として、バセドウ氏病が挙げられる。

逆に、甲状腺ホルモンの分泌量が低下するのが甲状腺機能低下症である。症状としては頭の回転が遅くなり無気力になる、エネルギー消費量が減るため体重が増える、便秘になる、筋力が低下する、皮膚が水ぶくれしたようになる、といったものが挙げられる。

水ぶくれしたようになるといっても、結構弾力があって凹ませてもすぐに元にもどる水ぶくれらしい(実際に見たことないから正確な知識ではないけど)。というのも、ムコ多糖類という水をひきつける物質が皮膚の下(皮下組織)に溜まってきて、水と混ざってゼリー状になるからなんだそうである。甲状腺ホルモンの低下によって、体内の様々な物質の交換が滞るため、ムコ多糖類のやり取りも滞って皮下に溜まる、というわけである。
(『ステップ内科③代謝・内分泌 第二版』p170~185より)

さて、ここからが本題。甲状腺機能が低下すると、血中のCPK値とLDH値が上がるという。CPKとLDHは筋肉が壊れたときに、筋細胞から漏れ出る物質である。色々な本を調べたのだが、その理由は記載されていなかった。

最初は甲状腺ホルモンが少なくなって筋細胞に行く栄養が少なくなるから筋細胞が壊れるのかと思ったのだが、甲状腺ホルモン低下によって筋細胞自体も栄養や酸素をそんなに必要としなくなるらしいので、どうやら"細胞が餓死する"という理由で細胞が壊れるわけではないらしい。

じゃあ、なんで筋細胞が壊れるのか?

どうやら、筋線維にもムコ多糖類が溜まるからであるようだ(『病態生理よりみた内科学』p681には「mucoproteinによって筋線維が分断され」るとあるが、上記の意味に解釈していいだろう)。筋線維というのは筋細胞が集まって束になったものだが、おそらく筋細胞と筋細胞の間に余計な蛋白が溜まってくるために摩擦が生じて筋細胞が壊れるんだろうと思う。

皮膚の水ぶくれ(これは「粘液水腫」と呼ばれ、圧痕を残さない浮腫non pitting edemaが特徴)と筋肉の破壊が同じ理由で生じているというのが興味深いと思う。治療法は甲状腺ホルモンの投与で、副腎不全を合併している場合はステロイドを併せて投与する必要があるそうである。


ちなみに、医学の話と言えば、もう一人の友人(リングネーム:フェニックス)と、「お目こぼし」とシェーグレン症候群の関係について非常に興味深い話をしたのだが、あまりにあまりな話なので、残念ながらブログに掲載することが出来ない。返す返す残念である。
  1. 2006/09/14(木) 23:47:54|
  2. 医学
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